メブコの独白

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【ネタバレ感想①】あさのあつこ先生『NO.6』 ストーリー全体についての感想、アニメ版との比較

先日、あさのあつこ先生の『NO.6』全9巻を読み終えました。

記憶に新しいうちに感想を残しておこうと思います。

ネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください。

 

 

 

『NO.6 』あらすじ

度重なる戦禍により、人と土地の多くが失われた。

残された人類は6つの都市を築き、それぞれにNO.1〜NO.6という名称をあてた。

 

NO.6で生まれた少年・紫苑の12歳の誕生日、その日は彼の運命を変える日であった。

嵐の中、開け放った窓から1人の少年が紫苑のもとに転がり込んでくる。

少年の名はネズミ

ネズミが矯正施設から脱走中の凶悪犯罪者であることを知りながらも、紫苑は負傷していた彼を介抱する。

翌朝ネズミは姿を消していたが、この出会いはずっと紫苑の心の中に残り続けるのだった。

 

4年後、紫苑の回りでは”人間が急速に老いて死ぬ”という不可解な出来事が起こる。

奇怪な事件の容疑者として連行される紫苑を助けたのは、他でもないネズミであった。

 

逃げ延びた紫苑は、聖都市NO.6 を出て、初めて外の世界を知る。

明日を生きるのに必死な人々、飢えと絶望、そして人狩り。

理想都市NO.6の真実が、徐々に明らかになっていくのだった…

 

読もうと思ったきっかけ

つい先月、『NO.6』のアニメを見たんですよ。

アニメ版は全11話と、気軽に見ることができる話数だったこともあり、原作未読ながら夢中になって見てしまいました。

 

「かなり端折っているアニメ版ですらこれほど惹き込まれたのだから、原作はさぞかし面白いのだろう!!!」と考えた私は、Amazonで大人買いしてしまったのでした...

NO.6〔ナンバーシックス〕全9冊合本版 (講談社文庫)

 

 

 

本編ネタバレ感想

全9巻という大ボリュームな『NO.6』ですが、全く中だるみすることがなかったため、最初から最後までずっと面白かったです。

 

登場人物たちの内面を深く掘り下げつつも、物語の展開としては常にスピード感があるので、とにかく読みやすい作品だと思います。

何度でも読み返したいです。

 

以下、項目別の感想です。(ネタバレ含みます)

ストーリー全体について

序盤から中盤にかけては、SFというより世界史を学んでいるかのような感覚で読みました。

科学者たちが秘密裏に行っていた非道な人体実験、条約に違反した軍隊の保持など…なかなか考えさせられるものがありました。

 

また、徹底的なヒエラルキー構造や差別、快適すぎる環境に慣れてしまった人間の脆さ、理想に燃えた研究者がどんどん道を踏み外していく様なんかは見事でしたね。

ただのファンタジーとは言い切れないような描写が続くんですよ。

 

そんな中、終盤で「エリウリアス」という絶対的な力を持った存在が明らかにされるというのが面白いと思います。

どれだけ人間が頑張っても及ばない、調子に乗りすぎた人間たちに鉄槌を下す存在です。

そんなエリウリアスが紫苑たちに力を貸したことで、NO.6という強大な存在の崩壊につながったわけで...

 

絶対的な権力や堅固な社会体制を瓦解させるのは、必ずしも人の力だけではないのかもしれませんね。

自然の力、人や時代によっては神や精霊の力と捉えるような、抗えない絶対的なものが働くこともあるのでしょう。

 

論理的に描かれたSFも面白いですが、”人間ではどうしようもない力”に動かされるお話というのも興味深かったなぁと思いますね。

 

 

 

また、主人公たちの心理描写も見事でした。

 

NO.6という理想都市で生まれ育った紫苑は、まさに”天然のお坊ちゃん”です。

自分が生き抜く上で必要だとしても、いくら過酷な状況だとしても、苦しんでいる人を見捨てることができない。

そんな子でした。中盤までは。

 

一方、ネズミは違います。

幼いころに家族や仲間を殺され、自分自身も矯正施設に連れていかれた過去があることから、NO.6 を憎んでいます。

人を疑い、時に冷酷にならなければ生き抜くことができなかったのです。

 

そんな2人が出会い、共に過ごしていくなかで、これまで知りえなかった感情・自分の一面を知ることになります。

 

穏やかな紫苑は、矯正施設の有様を知り、ネズミを殺されかけたことで変わります。

そんな紫苑の姿をどこか恐れ、自分が紫苑を変えてしまったと涙を流すネズミもまた変わったのです。

 

「変わった」という表現が正しいのかは分かりません。

矯正施設という厳しい環境が”これまで覗うことのできなかった内面を露わにした”というのが適切なのかもしれません。

 

ある嵐の夜に、たった1つの窓が引き込んだ彼らの出会い。

境遇の違う彼らが出会ったことは奇跡なのか、必然なのか。

 

「ネズミと一緒に、共に過ごした地下室に帰りたい」という紫苑の望みは叶わず、結局2人は別々の道を歩むことになりました。

紫苑は留まり、ネズミは揺蕩う。

 

分かれた後も、紫苑の部屋の窓は大きく開け放たれているのです。

またいつか、ネズミが飛び込んでくるその時のために...

 

彼らの人生がまたどこかで交差することを、読者として密かに願っています。

 

 

 

アニメ版と比べて

アニメでも十分すぎるほど面白いとは思っていましたが、原作はそれを凌駕する面白さでした。

 

『NO.6』 は、個人的に矯正施設に侵入してからのお話で一段と惹き込まれたので、アニメでは大分削られていたことに少しショックを受けました...

とは言え、かなり残酷でえげつない描写になりそうですし、ある程度カットするというのもアリだとは思っています。

 

あとアニメを見た時に、紫苑が終盤で一度死ぬという展開について行けなかったのですが、あれは原作にない完全なアニオリだったのですね...

 

色々と書きましたが、第1話の出来は最高だと思います。

ネズミとの出会いの場面は、原作以上に不思議な高揚感がありました。

紫苑が惹きつけられたという、ネズミの灰色の瞳の描写も美しかったですね。

 

おわりに

かなり長々と書いてしまいました。

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。

『NO.6 』関連の記事はまた書こうと思っています。

 

ネズミと紫苑の関係や、作品を彩った登場人物達のことなど、作品を読みながら考えたことがたくさんあります。

外伝のbeyondもまだ読んでいませんし...

私、まだまだ書けます...書かせてください...笑

 

長編なので、年末年始に一気読みするのも最高だと思います。

まだ『NO.6 』を読んだことのないという方は、この機会にいかがでしょうか?

 

私は紙媒体で購入しましたが、『NO.6』はkindleアンリミテッドで4巻まで無料で読めるようです。(2024年12月末時点)

www.amazon.co.jp

それでは、今回はこの辺りで失礼します。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!