こんにちは。メブコです。
私は「バナナフィッシュ」が好きなのですが、周りの人と話す中で1つ困ることがあります。
それは「バナナフィッシュってBLなの?」と聞かれることです。
だいたいこの質問をしてくるのはBLを読まない層なので、「BLではないけど...」と答えるのが関の山です。
実はこの質問、本気で答えようとすると結構難しいと思います。
もちろん”一般にBLというジャンルに分類されている作品”と異なることは明らかですが、
BLカルチャーについて考えれば考えるほど、一言で答えるのが難しくなるだろうな...と筆者は思いますね。
ということで今回は、
BLに詳しい人ほど「バナナフィッシュはBLか論争」を簡単に片付けられない理由
についてお話ししていきます。
一般に「バナナフィッシュ」がBLではないとされている3つの理由。
・少女漫画を扱うレーベルから出ているから。
バナナフィッシュは「フラワーコミックス」という、少女漫画・レディース漫画を取り扱うレーベルから出版されています。
よって、商業BLを扱うレーベルから出ているわけではないのだから”BLではない”ということでしょう。
余談ですが、近年の作品だと「消えた初恋」とかも分類に迷いますよね。
消えた初恋の場合は明確に男の子同士の恋愛が描かれていますが、マーガレットから出ているので...
・明確に「恋愛関係」と明記されているわけではないから。
2つ目の理由は、アッシュと英二が明確に「恋愛関係である」と明記されているわけではないからです。
2人の関係は、ただの友達とは言い難いほど深いものであることは確かですが、
BLではなく「ブロマンス」と呼ぶのがしっくりくるような気がします。
ボーイズラブというと、どうしても性愛(エロス)のイメージがあるのですが、
英二の愛なんかは「無償の愛(アガペー)」に近いと思います。
”BIG LOVE”だという話であれば完全同意ですが。
・腐女子だってBLにしたくないことがあるから。
本作の主人公であるアッシュは、幼い頃に男娼として扱われていた過去がありますよね。
そんなアッシュに初めて「見返りも何も求めない純粋な愛」を与えたのが英二です。
なので読者としても「アッシュと英二の関係はプラトニックなものであって欲しい」と願う気持ちが働くこともあるでしょう。
腐女子だからと言って、何でもBLにしたいわけではないんですよ。
なにがこの問題を難しくしているのか。BL史を簡単に振り返ってみよう。
ここまで読んで「バナナフィッシュはBLじゃないってことじゃん!!バナナフィッシュはBLなのか論争は解決だ!!」となれば話は早いんですが...
もしかしたら筆者と同じように、BLの定義をもっと広くした場合、バナナフィッシュもワンチャン含まれるのでは...?と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ということで以下、BLというカルチャーの歴史を簡単にお話ししていきます。
BLカルチャーの歴史
ここでは、男性同士の恋愛について、当事者の男性が語ったものではなく
女性の社会進出とともに姿を現した「主に女性が生み出し、女性が購入することによって成り立ってきた文化のこと」を”BLカルチャー”と呼ばせていただきます。
森茉莉
BLカルチャーの始祖は、「森茉莉」という女性作家であると言われています。
森茉莉は、かの有名な「森鷗外」の娘さんです。
彼女の書いた「恋人たちの森」という作品は、後述するBLの先祖たちや今日のBLにも受け継がれている定型が見られるようです。
続いて現れたのが、いわゆる「美少年漫画」、そして「JUNE」です
美少年漫画
「美少年漫画」というと、竹宮恵子先生の「風と木の詩」、萩尾望都先生の「ポーの一族」「トーマの心臓」などが有名ですね。
明確に同性愛が描かれているものもあれば、どこからがラブなのか...と問いたくなるような共依存関係が描かれている作品もあります。
JUNE
その後に現れたのが雑誌「JUNE」です。
男性同士の恋愛を扱った専門誌と呼んでも良いでしょう。
「小説道場」という中島梓先生が読者の作品を批評するコーナーなんかもあり、現在でも活躍されている作家さんを多数輩出したことでも有名です。
↓2024年5月に発売したばかりの本です。JUNE創刊者の方が語られており、JUNEに関する情報でこの本に敵うものはないでしょう。
JUNE以降は年代ごとに特色はあるものの、ひとまずは現在のBLと区別しなくても大丈夫です。
BL史とバナナフィッシュの関係
「BLの歴史は分かったけど、バナナフィッシュとどんな関係があるの?」と思われた方もいるかと思います。
私がBL史についてお話しした理由は、
「バナナフィッシュも場合によっては、BLの先祖のように扱われることがあるから」です。
例えばこちらの書籍です。
「BL進化論」では、BL史を説明するための年表などにバナナフィッシュが登場しています。
おそらく理由としては、「JUNEの刊行と時期が被っていること」、「バナナフィッシュの結末は当時の漫画特有の美学が現れていると考えられること」、
そして一番の理由は「バナナフィッシュが、後にBLを描く作家に多大な影響を与えたから」だと思います。
この観点で考えた場合、バナナフィッシュも”BLの先祖”だと言えるでしょう。
そして、BLの先祖を「BLの初期作品」として扱うこともあります。
その場合、「バナナフィッシュをBLではないと言い切ってしまうのはちょっと短絡的かも...」と思ってしまいませんか?
【結論】「バナナフィッシュはBLか論争」は方が付かない!
結論として、「バナナフィッシュがBLか論争は方が付かない!」ということになります。
BLを読まない方は”男性同士の親密な関係を見ただけ”でBLだと思うでしょうし、
BLを読む方の場合は”現在の一般的なBLとは違うから”BLではないと言うでしょう。
そして、BLというジャンルの生い立ちを学んだ方は
「今で言うBLではないけど、BLに影響を与えた作品だし...考えようによってはBLの先祖だから、広義のBLと言える...?」という感じで、全然結論が出ないと思います。
この記事を書いた理由
私がこの記事を書いた理由は、
「別に結論なんか出ないんだから、みんな好きなように捉えて良いんじゃないの?」ということをお伝えしたかったからです。
アッシュと英二の関係を親友とするも良し、恋人とするも良し、二次創作をするのも良し!!これで良いんだよ。
そして、「BLじゃないなら見るけど、BLだったら見ないわ...」と言っていた私の知人へ
「つべこべ言ってる暇があったら自分の目で見てくれ!後悔はさせん!!」
以上です。