今回は、尾上与一先生の小説「蒼穹のローレライ」をご紹介していきます。
こちらの作品は長いこと絶版になっていたのですが、2024年2月に徳間書店から復刊されました。
私は気になって購入したは良いものの、戦争を取り扱っている作品ということもあって、読み始めるまでに時間がかかってしまいました...
一度読み始めたらすっかり没入してしまい、あっと言う間に読み終えたんですけどね。
みなさんにも一度は読んでみて欲しいと感じた作品ですので、ここでご紹介させていただきます。
あらすじ
戦後18年目のある日、三上徹雄のもとに病死した旧友の息子が訪れてきます。
彼は、亡き父から預かった一通の封筒を届けに来たのでした。
三上が封筒を開けると、そこには戦死した零戦パイロットである”浅群塁”に関する内容が書かれていました。
時は遡り、太平洋戦争中期。
整備士である三上たちは、基地であるラバウルに向かう最中に敵軍に襲われたところ、
とある零戦に助けられます。
助けてくれたパイロットこそが、青い目をした声の出せない青年”浅群塁”です。
そこで三上は、塁の零戦からは”何やら奇妙な音が鳴る”ということに気が付きます。
この奇妙な音こそ、塁が”ローレライ”と呼ばれる所以なのでした。
奇妙な音は、塁が零戦に取り付けている”部品”が原因で鳴っているため、
三上はこの部品を外すことを提案するのですが、塁は断固拒否します。
この部品は”照準器”の役割をしており、
部品をつけることによって弾の命中率は上がるのですが、奇妙な音のせいで空中で敵軍に居場所を知られてしまうのです。
”自分の命も顧みず、成果を上げることにこだわる塁”と“整備士としてパイロットを危険にさらすわけにはいかない三上”は対立します。
やがて明かされる塁の過去、そして徐々に打ち解ける彼らを取り巻く戦況は...
【見所】塁が残した言葉。やるせなさの中にある仄かな温かさと救い。
本作は作品の冒頭にて、”塁は戦死したのだろう”と察することができます。
18年後の三上が開けた封の中身は、旧友からの手紙なのですが、その中で塁の最期の言葉が明かされます。
カタカナ数文字です。
その言葉を知ったとき、三上と共に私も泣いてしまいました...
三上との関わりの中で生じた塁の変化が伝わり、
塁を失ったやるせなさの中に、仄かな温かさと救いを感じたのでした。
そして、亡き塁を思って生きる三上の姿もまた、読者の涙を誘います...
塁の最後の言葉は、本作において最も重要な要素です。
ぜひご自身の手でページをめくり、この胸が締め付けられるような体験をしてみてください...
おわりに。同シリーズの作品について。
今回は、「蒼穹のローレライ」をご紹介しました。
本作は、尾上与一先生の「1945シリーズ」のうちの1作です。
このシリーズは2024年2月から、2か月毎に1作ずつ復刊されています。
そして2024年8月27日には、4冊目「プルメリアのころ。」が発売されました!
興味のある方は是非チェックしてみてくださいね!