こんにちは。メブコです。
今回は、永井三郎先生の漫画「スメルズ ライク グリーン スピリット SIDE-A,B」についてお話ししていきます。
2012年に第1刷が発行されましたが、現在でも名作として話題に上がる作品です。
(追記:実写ドラマ化おめでとうございます!!)
あくまで1つの解釈だということをご了承のうえ、楽しんでいただけると嬉しいです。
簡単なあらすじ
本作は、とある田舎の3人の男子中学生がメインとなって進みます。
1人目は「三島」、女子よりも可愛いらしい見た目をしており、男の人が好きです。
その見た目から、”ホモっぽい”という理由でいじめを受けています。
母親の口紅を塗るなど、隠れて女装をすることが心の拠り所となっています。
2人目は「桐野」、大人っぽくていわゆるイケメンです。
彼も女装に興味があり、男の人が好きです。
自分とは違って可愛らしい三島が気に入らず、いじめています。
ある日、三島の落としものである口紅を拝借し、塗っているところを三島本人に見られてしまいますが、
同性が好き、女装に興味がある等、"人には相談できなかった悩み"を共有した2人は、固い絆で結ばれるようになります。
(ちなみに表紙で描かれているのが、三島と桐野です)
3人目は「夢野」です。
桐野と一緒に三島をいじめていますが、彼の場合は三島に好意をもっています。
好きな子にちょっかいをかけてしまうアレです。
ある出来事をきっかけに、三島と急接近するのですが、
どうしても「同性を好きになること」が受け入れられないようで...
本作は、そんな3人がアイデンティティに迷い、
閉鎖的な田舎での噂話や家族への思いに悩みながらも、自分にとっての幸せを考えて選び取る、
「決断」の物語です。
【ネタバレ】本人の素因、置かれた環境によって正反対の決断をする2人
同じ悩みを共有し、かけがえのない時間を過ごした「三島」と「桐野」ですが、
2人は最終的に正反対の決断をするのです。
「三島」は田舎を離れ、自分らしくいられる東京に住むことに。
「桐野」は自分のアイデンティティを封じ、田舎に残って結婚し、子供をもうけます。
各々を取り巻くいくつもの要素が複雑に絡み合い、このような決断に至ったのです。
可愛らしい見た目と「自分らしく生きること」を後押ししてくれる母親をもつ「三島」と
自分の理想とは異なる男前な容姿と、多大な期待を寄せる母親をもつ「桐野」。
本人の素因、置かれた環境が全く異なる2人は正反対の道を選ぶことになります。
”パンドラの箱の鍵”と幸せになるために置いてきたもの
本作では「パンドラの箱」という言葉が度々登場します。
パンドラの箱というと、”災いのもと”というイメージが強いですよね。
三島と桐野のパンドラの箱の中には、同性が好き、女装に興味があるなど、
自分を構成する要素であるにも関わらず、"他の人には明かすことのできないもの"が詰まっています。
特に桐野は、これを”災いのもと”だと捉えていたのでしょう。
そして、封をしていたパンドラの箱の中身を
「口紅」という”鍵”によって開けてしまうのです。
三島は家でこっそりと口紅を塗った際、一時でも自分を解放していることに喜びを感じている描写があります。
桐野に関しても、口紅を塗っているところを三島に見られたことで、意図せずパンドラの箱を開けることになります。
終盤、三島は自分の口紅を桐野が持っているということをすっかり忘れていました。
2人が箱の中身を見せ合うようになってからは、箱をあえて閉じる必要がなかったのでしょう。
そして、クライマックスで桐野が三島に口紅を返す時、
桐野は「パンドラの箱の鍵を託す」と話しています。
桐野がパンドラの箱を封じて、もう2度と開けないことを選んだ瞬間であると筆者は感じました。
自分が幸せだと思う道に進むために、
三島は「自分の生まれ育った田舎での生活」、
桐野は「本当の自分を解放する生き方」を置いていくことを選んだのではないでしょうか?
おわりに。
もしかしたら自分の周りにも、桐野のように自分を封じ込めて生きる選択をした人がいるのかもしれないな...と考えさせられましたね。
三島と桐野、どちらの選んだ道が良い・悪いという話ではなく、
あくまで長い人生のうちの「大きな決断」の1つだったのだと思います。
2人の青年が自分の全てをさらけ出し、手を取り合って歩んだ青春時代は眩しく、非常に美しいものでした。
そして、今回の記事ではほとんど触れませんでしたが、
三島と夢野の恋の行方は必見です!!
もどかしくて苦しい展開もありますが、
たくさん考えて、迷った末に彼らはどのような選択をするのか...
ぜひとも見届けてください!
他にも、拗らせまくった学校の先生(スピンオフになってます)、彼ら3人の母親など個性的なキャラクターがたくさん登場します!
興味のある方はぜひ読んでみてくださいね!