こんにちは。メブコです。
今回は、
ヨネダコウ先生の「囀る鳥は羽ばたかない」1巻より、「漂えど沈まず、されど鳴きもせず」についてお話ししていきます。
1つの解釈として楽しんでいただけますと幸いです。
「漂えど沈まず、されど鳴きもせず」とは?簡単なあらすじもご紹介。
「漂えど沈まず、されど鳴きもせず」は、「囀る鳥は羽ばたかない(以下、囀る)」1巻の巻末に収録されている作品です。
囀る本編の連載開始よりも前に、読切として掲載されました。
囀るの主人公である「矢代」の高校時代のお話です。
↓以下、あらすじです。
主要な登場人物は、囀る本編の主人公である「矢代」
そして、矢代の同級生である「影山」です。
矢代は「自分が人を本気で好きになることはない」と思っており、
特定の恋人を作らず、いつも行きずりの人とばかり関係を持っています。
(矢代がこのようになった経緯や理由は、一言でいうと「自己防衛」なのですが、後日詳しい解説記事を出します。)
そんな矢代が初めて、恋と呼ばれるような感情を持ったのが「影山」です。
影山を思うことにより、未知の感情が芽生え、これまでにはなかった行動をとるようになります。
矢代自身はこのことを、自分の中に生じた”歪み”であると言っています。
しかし、「影山」は矢代の恋心に気が付くことはありません。
そして、ある日の学校の屋上にて
「俺はお前(矢代)を痛々しくて可哀そうな奴だと思っている。お前は1人で、俺も1人だからだ。でも、俺はお前を親友として大事に思っている。」
なんて言い出すのです。
それを聞いた矢代は、恥ずかしげもなく「親友」と口にする影山のクサさを笑います。
しかし、その後帰宅した矢代は自宅の窓辺に腰掛けると、突然涙を流し始めます。
そして、影山から言われた「お前は1人だからだ」という言葉を思い出し、
さらに激しく涙をこぼすのでした。
【ラストシーン】高校時代の矢代の部屋にて。ドラマCD版で鳴り響く水滴の音の意味とは?
影山と屋上でやり取りをした後、矢代が帰宅した場面についてです。
ドラマCD版では、
この場面で「ぴちょん」という水滴の音が鳴っているのです。
↓こちらに収録されています。
矢代が涙を流した理由は?
矢代は帰宅後、窓辺に腰掛けて突然泣き出します。
この時の矢代は「夕日を背景にして、自分の部屋の方を向いて」泣いています。
「親が帰宅した形跡がある部屋で、自分一人で佇んでいる」
という状態に気が付き、自分は1人きりだと感じたのでしょう。
そこで初めて、影山から言われた「お前は1人だからだ」という言葉を理解したのではないでしょうか?
思い人である影山に憐れまれたこと、1人だと言われたこと、
自分達の関係を「親友」と断言されてしまったこと(それ以上の関係を意識されていないこと)を理解し、打ちひしがれたのだと思います。
そして、これまで不健全に生きるしかなかった自分が、
こんなにも普通に恋をして、失恋をして傷ついたという”歪み”に絶望したのではないでしょうか。
失恋の悲しみ、それに加えて「恋なんてしないだろう」と思っていた自分が”普通に”傷ついているという現状、
つまり矛盾を抱えている自分自身への失望も相まって矢代は涙を流したのだと、筆者は考えています。
そして、この物語は
「人間は矛盾でできている。
寂しい、寂しくない。
恋しい、恋しくない。」
というモノローグとともに、激しく涙を流す矢代が描かれて幕を下ろします。
↓こちらの記事でも、この場面について触れています。
おわりに
今回は、「漂えど沈まず、されど鳴きもせず」についてお話ししました。
囀る本編を通して矢代を苦しませる「矛盾」が現れたエピソードでしたね。
「矢代」という人物を知り、囀る本編を読解するうえで欠かせない物語です。
未読の方は、この機会に是非読んでみてくださいね!
【PR】